日揮株式会社とベリリウム製造のパイロットプラント「BETA」の基本設計契約を締結

2024 / 10 / 25

 “鉱物資源の可能性を引き出し、明るい未来を次世代につなぐ” をMissionとして掲げる株式会社MiRESSO(本社:青森県三沢市、代表取締役CEO:中道勝、以下「MiRESSO」(ミレッソ)という)は、日揮株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、代表取締役 社長執行役員:山口 康春、以下「日揮」という)に対してベリリウム製造のパイロットプラント「BETA」(Beryllium Testing plant in Aomori)の基本設計を委託する基本設計契約の締結を行いました。「BETA」により独自の低温精製技術のパイロット実証を行い、2027年度中のベリリウム生産開始を目指します。なお、MiRESSOは日揮グループのCVCであるJGC MIRAI Innovation Fund(日揮みらい投資事業有限責任組合/無限責任組合員:グローバル・ブレイン株式会社)から出資を受けております。

1. BETAの概要

 MiRESSOは2023年10月に、文部科学省中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR フェーズ3)核融合分野(事業テーマ:核融合原型炉等に向けた核融合技術群の実証)の採択を受け※1、新たな低温精製技術を用いたフュージョン(核融合)エネルギーに必要となるベリリウムの生産実証を進めています。この度MiRESSOはSBIR事業の一環として、ベリリウム製造のパイロットプラント「BETA」(Beryllium Testing plant in Aomori)の整備につき、プラントエンジニアリング会社として国内有数の実績を持つ日揮に対して、基本設計を委託することとし、契約締結を行いました。BETAでは、新たな低温精製技術のパイロット実証を行い、2027年度中にベリリウム生産を本格始動し、ベリリウム製品の販売開始を目指します。MiRESSOはベリリウムの安定供給により、フュージョンエネルギーの社会実装に貢献します。
 なお、BETAの整備にあたっては、大平洋金属株式会社と包括的業務提携契約を締結し、大平洋金属の製造所(青森県八戸市大字河原木字遠山新田5-2)の一部を賃借の上、整備する予定です※2。

[BETA概要]
所在地:青森県八戸市大字河原木字遠山新田5-2
面積:約300 m2
生産開始:2027年度中

※1:株式会社MiRESSOが文部科学省の中小企業イノベーション創出事業(SBIRフェーズ3)に採択(20億円)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000129969.html

※2:株式会社MiRESSOと大平洋金属株式会社が包括的業務提携契約を締結
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000129969.html

2. 事業背景

 フュージョン(核融合)炉は、プラズマ状態の重水素とトリチウム(三重水素)を燃料にしたフュージョンエネルギーを電気として取り出す発電システムですが、燃料のトリチウムは天然ではほとんど存在しないため、プラズマの周囲を取り囲むブランケットと呼ばれる機器内で、トリチウムを自己生産させる必要があります。このトリチウムを自己生産するために、中性子を1個から2個に増倍させる中性子増倍材のベリリウムが、大量に必要になります。

 しかしながら、ベリリウムの調達にはいくつかの大きな課題があります。ベリリウムの現状の価格は非常に高価であり、また、生産量としても、現在の世界の総生産量以上のベリリウムが、フュージョンエネルギーを実証する原型炉1基あたりに必要なため、圧倒的に不足しております。そのため、ベリリウムを安価に安定的に確保することが、非常に重要な課題の一つとされております。

3.MiRESSOの低温精製技術

 MiRESSOの代表取締役CEOである中道らは、フュージョンエネルギー研究機関であるQSTにおいて、ベリリウムの精製コスト低減を図る研究開発を進め、化学処理とマイクロ波加熱の複合技術による新たな低温精製技術の開発に成功しました(特許出願済み)。
 従来のベリリウム精製では、難溶解性であるベリリウム鉱石の溶解工程において、2,000℃の高温熱処理が必要であったことに対し、新たに開発された低温精製技術では、300℃の低温且つ常圧で、ベリリウム鉱石であるベリルを容易に溶解することができ、圧倒的な低コスト・省エネルギーでのベリリウム精製を実現可能です。
 MiRESSOはこの低温精製技術をパイロットプラントであるBETAによってスケールアップさせる予定です。

(低温精製技術におけるマイクロ波加熱時の様子の写真)    (右:ベリルと、左:低温精製技術でベリルを全溶解した溶液の写真)

4.将来的な展開

 MiRESSOは、BETAによる実証結果を踏まえた上で、フュージョンエネルギーを実証する原型炉及び商用炉の建設が本格的に進む2030年代初頭に、ベリリウム生産年100トン規模の量産プラントを建設することを目指しています。

5.日揮株式会社について

 日揮株式会社は日揮グループの国内事業会社です。日揮グループが世界各国でプロジェクト遂行を通じて培ってきたエンジニアリング技術やプロジェクトマネジマント力を礎にして、国内でEPC(設計・調達・建設)事業を行っています。長期経営ビジョン「2040年ビジョン」では「エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立」、「資源利用に関する環境負荷の低減」、「生活を支えるインフラ・サービスの構築・維持」の 3 つの社会課題の解決を目指しています。